ディールズ・ウィールズの生みの親、カートゥーンクリエーターのデエィブ・ディールは片手にペン、もう片方にハンドルを握って生まれたんだ。 彼のキャリアは熟練したプロフェッショナルアーティストとしてのものと平行してもう一つ、その猛烈な自動車との関わりがあるんだ。 常に5台を下回らない数のクルマのオーナーであり、またレースドライバー(デエィブはバハ500 と メキシカン1000 に過去3年出場している)であり、クラシックカーのレストアラーであり、さらにモデルキットビルダーでもある。 今、これらの経験はこのボックスアートカートゥーンになった。 そして君はこの箱の中にディールズ・ウィールズのモデルキットを見ることになる。 カートゥーンとモデルの両方がデエィブ・ディールの仕事だ。 モデルは…ドデカいタイヤ…いかしたボディスタイル…おかしな造形のドライバーフィギュア…カートゥーンそっくりににデザインされているんだ! ディールズ・ウィールズはレベルの新しいモデルシリーズ。 ぜったいハマることまちがいなし!。 (70年当時の箱横の説明より)
"Deal's Wheels",日本名"ディールズ ホイール"。 1970年にスタートした同シリーズは程なく日本にも輸入され当時のグンゼ産業(現GSIクレオス)レベル部から販売された。
当時の日本ではあまり馴染みの無いサイズのスクエアで分厚い箱に入ったキットは、\800程の価格が付けられていた。 私がこのシリーズのキットを初めて見たのは1974年か75年だった思う。 北海道は旭川市のみずほ通りにあった宇宙堂という模型店にそれはあった。 ウィリーする緑色のバギーが後ろからのアングルで描かれていた。 異様にドデカイタイヤとドライバーの頭。 こんなの見たこと無い! そのボックスアートにもの凄い衝撃を受けた。 これ絶対欲しい!!! …しかし\800は当時の小学校低学年には到底届かない値段であった。 ダメ元で親にねだってみたものの当然あっさり却下。 しかし、欲しいものは欲しいのである。 学校から帰ると、「ちょっとプラモ見てくる」。 自転車をこいで宇宙堂に日参した。 あんなかっこいいプラモ、他の誰かに買われたら悲劇なのである。 だからちゃんと宇宙堂のいつもの棚にあるか偵察していたのである。 家では頭に焼き付けたグリッターバグの絵を書き、「こんなプラモがあってね、すごくカッコいいんだよねぇ〜 ほしいなぁ…(タメイキ)」と毎日ヘタクソな絵を親に見せ続けた。 流石に親もあきれて、買ってやっても良いが条件があると言ってきた。
「土曜の夜だ! 出発だ!」そう叫ぶとタイロン・バックナイジェルは彼のバグボムに飛び乗った。 巧みにアンティークのカッパーハーストシフターを2速に叩きこむ。 タイロンは"B-Bomb"…愛情を込めてそう呼ぶ…を導く。 ジャイアント・ハンバーガー・プレイスまでの長く、孤独なハイウェイを。 夜の空気をクロームの吸気系へとあまねく吸い込ませて疾走する。
「ヘイ!ウイップ」タイロンは彼の良き友ウイップとティナに挨拶する。
「どうしたの?」ウイップが愛想よく尋ねる。
「俺の新しい バグボムさ!」タイロンは答える。 「見てくれ! フィアーゴールドレッドのボディカラー。 ビッグワイドのインディタイアをフロントに、さらにでかっくてワイドなやつをリアに、んでもってそいつらをマウントしてるスペシャルワイドエンドのクロームホイールを!」
「ボス!」ウィプはちらっと見た。「スティンガーエグゾーストもかっこいいぜ!」
「だろ!」彼は付け加える。 「…でもってクリアな窓にスペシャルラリーライト…ピースエンブレム…"BUGBOMB"のライセンスプレート…そして、信じられるか?」タイロンは彼のバグボムに乗り込んだ。 ジャイアントハンバーガープレイスにいる全員が叫んだ「オー!ワォ 信じらんない。 これって、やりすぎじゃないの? ん? こいつ動くぞ! そのホイールは転がるんだ!」
「いかしてるぜ」タイロンは彼のコロ走行のバグボムの中でうっとりとエンジン音をくちずさむのだった。
("BUGBOMB"インスト冒頭のストーリーより)
お気に入りの改造ワーゲンで土曜の夜のダウンタウンへ出かけた男の話のはずが、いつのまにかプラモを「ぶ〜んドド」している話になってる。 こーいったキットを組み立てる人間の頭の中のファンタジーが、ショートストーリーとして全てのDeal's Wheelsのキットに付いている。 教科書的な綺麗な英語しかしらない我々にはかなり読みづらい文章で、上記もかなりの意訳がある。
それでは次のチャプターからは私が組み立てた数台のDeal's Wheelsを見ていただこう。
Deal's Wheelsシリーズ第一作であり、シリーズ全体を象徴する顔とも言うべきキット。 それがこのバグボム。
今回作ったキット。 2007年の10月頃カナダ人から購入。 当時の日記を読むと結構な額を支払っていることがわかるが、バニーマークが消されていない初期箱のものは、案外出てこないので、無駄にがんばってしまったようだ。 左写真のようにパーツは全て揃っているが切り離し済と言う状態だったため、作ることに躊躇しなくて済んだ。 実際のところこのキットの価値の6割くらいは箱の方にあるのではないかと思っている。 故に、Tシャツプレゼントの告知(それはそれで面白いのだけど)が載ってたりせず、バニーマークも消されていないこの箱は宝物なのである。
ボディは大変綺麗なキャンディレッドで成型されており、クリアを掛けるだけとか、この成型色を生かした仕上げをしたいところだが、ものすごく薄い上に、右写真のように鼻面に大きなヒケがある為、ここを修正するなら結局全塗装するしか無いのである。
Dave Dealの描いたボックアートと比べてもらえばわかるが、ディテールがイラストと結構違う。 インスト掲載のストリーに出てくる"スペシャルラリーライト"は箱絵に無く、キットにあるので、木型なりテストショットなりが出来た後で、ストーリーが作られていたらしいことが推察される。 これはDeal's Wheelsの第一作なのだが、イラストからの線の拾い方が稚拙で、ドアノブはおろか、ドアの分割線すら無い。 しかし、ボディ・シルエットは全Deal's Wheelsの中でもVAN同様最高の出来だったりする。 そんなワケで全てのDeal's Wheelsの中で一台を選ぶとしたら、やはりコレかなと思うわけである。
このキットの白眉として、最も私が気に入っているが車外に設置されたメーターバルジ。 68年頃なら例えばポンティアック・ファイアバード等でもタコメーターはメーカーオプションでボンネット上に設置されたメーターバルジに収められ、車外にあるというレイアウトが見られた。 そういったマニアックな線の入れ方が、さすがDave Dealだと思うわけだ。 針が一番下を指してるのが残念だが、これはレーシング仕様のメータだと脳内設定して、3000rpm以下では針が振れないのだと考えることにしている。 (パワーが最も出る6000rpm〜7000rpmあたりで、針が一番良く見える真ん中あたりに来る)
"インディタイプ"のタイヤ。 通常のトレッドパターンではなく、フォミュラーカーの様なグルーブドタイヤになっている。 このパーツは何故か同じBUG BOMBでも時期により違うものがセットされる。 また、他のDeal's Wheelsには採用されていない。
おまけ
1980年にアメリカレベルがFUNSTERというレーベルでDeal's Wheelsのうちいくつかの車種を復刻販売した。 これはそのうちの一台、FUNBIRD。 TIREBIRDのFUNSTER版と言うわけ。 Deal's Wheelsの痕跡は消されてカラーリングもセンスの無い変更がされたものが多かったが、このFUNBIRDだけはオリジナルと比しても悪くない出来。 このキットはDeal's Wheelsを集め始めたばかりの頃、雨漏りしたので屋根裏の荷物を売るというアメリカ人から送料込み$25程で買ったもの。 こいつも作りかけでパーツ切り離し済みだった。 雨漏りしたので…と言う弁の通り、明らかに濡れた後があり、特にデカールは悲惨なことになっていた。
最初に組み立ててみたDeal's Wheels。 しかし、フロント周りの合いの悪さに嫌気が刺して、しばらく放り出していたもの。
少々合いが悪くても、ボディフォルム等が良ければ愛情でなんとかなるのだが、そのフォルムも実は酷い。 Daveのイラストに近い雰囲気になる角度を選んで撮影しているが、実は高さが全く足りないためヒラメみたいなシルエットなのだ。 フロントのエアダムも全くシンメトリーが取れておらず、左右で全然形が違う。 だけど、80年代のアメリカの何処かの街で買われて、途中まで手をつけられたものの、(おそらく)その酷い出来きのせいで屋根裏部屋にしまわれて、それが四半世紀後に雨漏りが原因で、太平洋を超えた極東の島国で完成させられる……ことになったら、それはプラモにとっては、とっても幸せなストリーなんじゃないか…などと、タイロン・バックナイジェルばりの妄想を抱いて、なんとか完成に持って行ったと言うワケ。
OLD SCHOOLのラインで復刻されたTIREBIRD。 オリジナルのTIREBIRDのボックスアートからはいろいろと消されているのだが、キットそのものはタイヤ上のバニーマーク以外は(パーツの合いの悪さも含めて)ほぼオリジナルのままのようだ。 最初期版では透明だったウインドウパーツが何時の頃からかクリアグリーンになった。 ウインドウがクリアグリーンだと中のフィギュアヘッドがゾンビの様に見えるので、塩ピ板からクリアなウインドウを搾り出した。
スポンサーロゴでもあればまた見栄えが違ってくるのだろうが、オリジナルの白では全く面白みに欠けるので、バイキングブルーにしてみた。 車体上のラインはFUNBIRDのデカールを型紙にしてマスキングしたもの。 ブルーに白のラインを入れたらら350GTみたいになったので、フロントグリルにジャンクパーツででっち上げた黄色のフォグライトを入れてみた。 TIREBIRDとFUNBIRDをほぼ同時に作ってみて判ったのだが、TIREBIRDも今回の復刻に合わせて金型の整備が行われていて、FUNBIRDにあったアンタイウイリーバー上の酷いヒケが、TIREBIRDではある程度消えている。 フィギュアの指のモールドも爪や関節のシワがきちんと彫り直されている。 だけど、ドアミラー下のヒケはそのまま。 勿論両方共エポキシパテで埋めてある。
キット自体の基本パフォーマンスの低さは元が70年のキットなので、そこはユーザーの愛情パワーでなんとかするしかない。 しかし、プレミアムキットとなって手をつけられないより状態より、少々仕様が変わっても気軽に作れる復刻版を今後もコンスタントに出してもらいたいものだ。